2012年04月12日

☆☆☆☆☆「「当事者」の時代」佐々木俊尚著

既に、あちこちで話題の本書。
1週間前に読み終えたにも関わらず、いまだに本書からのメッセージについて考えさせられているスゴ本。
(そんなこともあり、なかなかブログにUP出来なくて・・・。)

構成は以下のとおり
プロローグ 三つの物語
第1章 夜回りと記者会見ー二重の共同体
第2章 幻想の「市民」はどこからやってきたのか
第3章 一九七〇年夏のパラダイムシフト
第4章 異邦人に憑依する
第5章 「穢れ」からの退避
第6章 総中流社会を「憑依」が支えた
終章 当事者の時代に


突き放されたようなスッキリしない読後感。

一見、各章で書かれた内容が集約していく第6章の内容がジワジワ響く。
この分析はスゴイね。もやもやしてた景色が、スカッとクリアになった。
幻想としての弱者の視点に立ち、「今の政治はダメだ」「自民党の一党独裁を打破すべし」と総中流社会のアウトサイドから、自民党や官僚という権力のインナーサークルを撃つ。その<マイノリティ憑依>ジャーナリズムは、アウトサイドの視点を持っているがゆえに、総中流社会の内側にいる読書にとっては格好のエンターテイメントにもなる。
しかしウラの実態では、マスメディアはフィード型の隠れた関係性によって、自民党や官僚当局との濃密な共同体を構築している。
このような二重構造。そしてこの砂上の楼閣のような二重構造は、高度経済成長という右肩上がりに伸びていく社会で富がふんだんに増えつづけていたからこそ、持続を許された。誰もが「明日は良くなる」という夢に酔い、増えつづけていると信じられていた富を分配した社会だからこそ、ジャーナリズムはエンターテイメントであることを許され、そしてこのエンターテイメント性という緩みの上で、二重構造であることの欺瞞は許されてきたのだ。
言い換えれば、こういうことだ。
社会のインサイドからの目線は、つねにフィード的な濃密なコンテキストというパラダイムに支配され、そこにはオープンで開かれた社会という視点は欠如している。
社会のアウトサイドからの目線は、つねに幻想の市民という<マイノリティ憑依>に支配され、決して当事者としての意識を持ち得ない。
そしてマスメディアは、この濃密なコンテキストの共同体と、<マイノリティ憑依>という二つの層の間を行ったり来たりしているだけだった。
そういう宙ぶらりんな構図のなかで、マスメディアはつねに権力のインサイダーとなるか、そうでなければ幻想の市民に憑依しているだけである。いつまで経っても、日本社会に生きているリアルな人々に寄り添うことはない。

マスメディアに対する不信が生じるる構図がクリアになった。

ここで終わらないのが、本書の持つ凄み。
終章でのメッセージがジワジワ響く。
他者に「当事者であれ」と求める前に、まず自分が当事者であることを追い求めるしかない。
これはマスメディアと視聴者、読者の関係においても同じである。マスメディアに対して視聴者・読者である私が「当事者であれ」と求めることはできない。なぜならそれは傍観者としての要求であるからだ。
そしてさらに、これは本書の書き手である私と、読者であるあなたとの関係においても同じである。
私があなたに「当事者であれ」と求めることはできない。なぜならそれは傍観者としての要求であるからだ。
だから私にできることは、私自身が本書で論考してきたことを実践し、私自身が当事者であることを求めていくということでしかない。
そしてそれはおそらく、マスメディアの記者たちにも同じ課題が用意されている。
そしてさらに、それはソーシャルメディアに参加する人たちにもやはり同じ課題が用意されている。
そう、あなたあなたでやるしかないのだ。


どうやるか?これが書かれてないから、すっきりしないモヤモヤが残るスゴ本なんだと思う。
最後の著者のメッセージが読者を大人扱いし、一人一人が考えろ!と突き放した感じで、イイんだな。

厳しい道なのかもしれないし、間違った立ち振る舞いをするかもしれないけど、迷走しながらも何とか踏みとどまって、当事者として出来ることをコツコツとやっていこうと思ってます。

「当事者」の時代

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著者:佐々木俊尚
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posted by J at 07:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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