お勧め度



上司がよく話題にしていたこともあり、小泉ー竹中ラインについては、いつかキチッと把握したいと思っており、本書を読み始めました。
行き帰りの電車で読み終えたのですが、郵政民営化を問う総選挙に打って出、見事勝利した部分を読んでいて、思わず泣きそうになったくらい本書に引き込まれてしまいました。
本書は、竹中さんが大臣に就任してからつけ始めた日記に基づき、書かれたものです。
構成は以下のとおり
序.改革の日々が始まった
1.小泉内閣という奇跡
2.金融改革の真実ー不良債権という重荷
3.郵政民営化の真実ー改革本丸の攻防
4.経済財政諮問会議の真実ー政策プロセスはどう変わったか
終.日本経済の二つの道
私のアンテナに強くひっかかったのは以下の箇所
序章で熱く触れた後、全ての章を通じて、小泉さんに対する厚い信頼が貫かれているのですが、なかでも、
勉強会を通して決してメモを取らず、じっとしながら、ときに眼を閉じて、相手の話に聞き入っている小泉氏の姿である。後にわかったが、総理に就任してからもこのスタイルは一貫していた。つまり、余計な枝葉末節をそぎ落として、真に腑に落ちたことだけを大切に持ち帰るのである。
大局判断を間違えないために細部を捨てる勇気は、まさにトップ・リーダーに求められる資質だ。真に腑に落ちたことだけを持ち帰る。だからこそ、小泉総理の主張は、その基本的な部分において、決してぶれることがない。そして発する言葉は、常に相手の腹の底に深く届くような強烈さと新鮮さを持っている。という表現が、竹中さんが担ごうと思った小泉さんの資質を言い表しており、非常に印象的でした。
官僚の性質として
「無謬性」=間違いがない を求めるマインド があるとし、
それが改革を拒んでいるという説明や、
批判する側には以下の3つのパターンがある
1.とにかく反対の立場でもんを言う事
2.永遠の真理をかざして批判すること
3.批判する側にレッテルもしくはラベルを貼ること
という分析は、非常に納得が出来ました。
スタッフの動きの参考例として勉強になったのですが、なかでも
大臣イニシアティブは、、前向きのプレッシャーを各大臣に課すことにより、改革を加速させる一つの機会になった。そもそもこれは、北欧の国などで、予算編成時に首相の前で行われる大臣会議からヒントを得たものだった。もちろんこれらは、裏会議で各大臣に注文をつけるポイントを議論し、民間議員とシナリオを協議し、さらに必要な指示を総理から出してもらう、という手順で行われた。という点や
政策を決定しそれを実施するに至までのプロセスを以下の4段階に整理している点は非常に参考になりました。
1.政策に関するアジェンダ設定を行うこと
2.政策の方向性ないしは基本方針を、リーダーを中心にしっかり決めること。
3.基本的な方針に則って制度設計をきちんと行い、必要な仕組みを作ること。
4.民主主義のプロセスを踏まえた合意形成。
また、
役所や大臣間の権限争いは霞ヶ関の常であるという言葉そのままの数々の事例や、日銀と金融庁や竹中さんとの関係等々、かなり突っ込んで書かれており、官僚の動き方を知るのにも役立ちます。
諮問会議の民間議員のメンバーであった
大阪大学教授の本間正明氏、トヨタの奥田会長、ウシオ電機の牛尾治郎会長、東京大学教授の吉川洋氏
竹中さんのスタッフであった
岸博幸氏、真柄昭宏氏
という面々から見た竹中さん・小泉さんというのも興味がありますので、これから彼らの視点も追っかけてみようかな、なんてことも思っております。
私は、企業の戦略スタッフの視点で役立つのでは、という視点で本書を読み、実際、非常にこれから使えそうな考え方や動き方を学ぶ事ができましたが、もっと純粋に小泉ー竹中ラインの業績を振り返ってみるのも良いかもしれません。
また、思わず泣きそうになったくらい、感情移入することが出来たので、読み物としてもGoodです。皆さんに、ぜひ、読んで欲しい1冊です。